朝、目が覚めたらそばにいて

「ココいい?」

と登坂くんが問いかけた返事だって

「どうぞ」

沙也加の返事はクールだ。

「いいよー」

ほら、私なんて子供っぽい。

「はぁ」

言ってから自覚して私がおもむろにため息をつくと私の隣に座った登坂くんが頭をグリグリと撫で回す。

「やだ!髪型が崩れるよ」

「お前が失礼だからだろ。俺が座ったらため息なんかつきやがって」

「登坂くんが来たからじゃないよ」

「じゃ、何だ!」

私が髪型を直していると登坂くんに答えたのは沙也加だった。

「また夢見てるの、この子は」

いや、沙也加さん、ため息の理由はそこじゃないから。

「今度は何?また小説の中の男か、それともテレビドラマの主人公か?」

今までの私の恋愛遍歴を並べられると恥ずかしいものがある。
恋愛遍歴という事すらためらわれる内容だ。

「今回は珍しく三次元。本屋で逢った背中に一目惚れ」

沙也加が答えると

「何だそれ」

アジフライ定食のアジに醤油をかけながらチラッと私を見て登坂くんが意味がわからないという。


「話せば長くなるの」

長くもないけれど、そうでも言わないと格好がつかない。


「ふーん、じゃ、今夜久しぶりに行くか?」

私と沙也加の顔を見て飲みに誘う。
仕事では強気な登坂くんは沙也加を誘う時は弱気だ。
本当は沙也加だけを誘いたいくせに。
でもそんなことには触れずに真っ先に誘いに乗る。


「行く行く!沙也加も行くでしょ?」

「金曜日だしね、乗った」

「よし!じゃ、なるべく残業しないようにな」

そう約束して私と沙也加は一足先に職場に戻った。
実はこのメンバーでの飲み会が私は大好きなのだ。




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