初恋の人
どちらにしても、その女性を羨ましく思う気持ちだけは、真実でした。

そしてしばらくすると、事態は大きく変わりました。

紳太郎さんが、結婚に乗り気になったのです。


「紳太郎の奴、医者を辞めたいと言い出した。」

「紳太郎さんが?」

私は、夫の着物をたたみながら、医者である紳太郎さんの姿は、もう見れないのかとがっくりきました。

「結婚する代わりに、医者を辞め、好きな事をする。紳太郎の奴、交換条件を出してきた。」

「まあ。」

その代り、新婚だからなのか、紳太郎さんが毎日家に帰ってくるようになった事が、私は嬉しくてたまりませんでした。


ところで、一見普通に見える私達夫婦には、大きな悩みが一つだけありました。

結婚して何年も経つのですが、私と夫の間には子供がまだできなかったんです。

それに対して、夫は何もいいませんでした。

それでも心の中では、子供が欲しいと願っているのは間違いありません。


< 32 / 80 >

この作品をシェア

pagetop