初恋の人
「本当ですか?」

倫太郎さんは、少し微笑んで、こう言ってくれました。

「君はまるで……崖の上に咲いている、一輪の花みたいな人だから。」


花みたいな人。

そう言われるよりも、一輪で咲いていると言われた事が、とてもとてもうれしくて、気付いた時には、彼と婚約していました。

「綾女。一人だと思う時があったら、手をそっと、伸ばすといい。必ず、おまえの側には、俺がいるから……」

そんな言葉を添えられて……


そして私は、倫太郎さんのあの時の言葉がウソではない事を、自分は一人ではない事に、気づきました。

「世の中の男は、情けない男だと、笑うだろうな。貞淑で従順な女は、他にもたくさんいるというのに。」

夫はずっと、私を優しく見つめてくれてました。

「こんな女を……今さら惚れ直すなんて……」

夫から温かいものが、私に伝わってきました。


私はもう、目の前の夫を見ることができずに、泣き崩れてしましました。
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