初恋の人
3日ぐらい経った頃でしょうか。

外に人の気配を感じ、戸を開け覗いてみると、紳太郎さんが一人庭に立っていました。

「紳太郎さん。」

私が呼ぶと、彼はゆっくり近づいてきました。

私も縁側に座って、彼を待ちました。

彼は、私との間に距離を取って立つと、やっと口を開いてくれました。


「綾女、本当の事を教えてくれ。」

「本当の事?」

「お腹の子供は、俺の子供だろう。」


そう。

今日の朝、私に子供ができた事を、彼と詩野さんに伝えました。

詩野さんに何ヶ月か聞かれ、三ヶ月だと答えると、彼は茶碗を落とす程に、驚いていました。

紳太郎さんは、気づいてしまったのです。

私の子供の父親が、誰なのか。


「知ってどうするんですか?」

紳太郎さんは、顔色一つ変えずに、私に歩み寄ってきました。

「もし俺の子供なら、兄貴と詩野に話して、綾女と二人、どこか遠くに行ってもいい……」

彼は、私から顔を背けませんでした。
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