いちばん、すきなひと。
喧嘩の理由〜松田目線〜
朝、いつもどおり学校へ向かっていると
目の前に並んで楽しそうに歩く二人がいる。
いつもの見慣れた光景だ。

だから、俺もいつもどおり
奴らを茶化しにいこうと足早に、歩く。




アイツはきっとーーー野々村のことが好きな、はず。
近くで見てたら丸わかりだろ
なんせ、俺が一番
アイツを側で見てきたんだから

でも、野々村にはいつの間にか彼女がいて
みやのっちには全くその気は無さそうだ。
そのクセに、楽しそうにいつも変な絡み方をする。

それが、気に食わない。
昔からそうだ。


中学の頃から、
あの二人はいつも仲が良くて
いつ丸く収まるのかとヤキモキした。

周りで囃し立てたところで
二人揃って否定する始末。
一体どうなってんだ。

いつだったかーーー野々村に聞いたことがある。
「なあ、お前…アイツの事どうすんだよ」
「は?」
何の話だ、と全く知らない反応をされてイラッとした。
「みやのっちだよ」
「なに」

遠回しに聞いたところで、いつもの様にはぐらかされるのがオチだ。
ここはひとつ、ストレートに
「アイツとさ、付き合ったりしねえの?」
「え?なんで」
「なんで、って…」

俺は言葉に詰まった。
もしかして、本当に
野々村は彼女の事をなんとも思ってないのだろうか

「別に、そんなの必要ねえじゃん」
野々村は、そう言ってサッサと話題を変えた。

必要ない。
それがどういう意味なのか、俺にはサッパリ分からなかったが
ある日、アイツが知らない女子を連れて歩いてるところに遭遇し
全てを察した。

そういうことか。

それじゃあ、なんでみやのっちに
あれほど親しげに近づくのか。
不思議でならない。


そんな風に、俺が変なモヤモヤを持て余しているうちに
俺自身が、彼女に惹かれていることに気付いた。
だから、こんなに野々村に腹が立つのだ。
情けない。
ただの嫉妬じゃねえか。

だからこそ、みやのっちを何とかしたくて
修学旅行で告白し(みごと振られたが)
それからも気軽にプッシュして、彼女の反応を楽しんでいる。

(野々村はもう、諦めろよ)
そう、言いたかった。
けど、そんな事俺が言えるはずもなく。

野々村が俺たちの事を勘違いした時も
俺は内心、アイツがそこで本心を出してくれればいいと思った。
もし、みやのっちに特別な感情を抱いていれば
俺が手を出したら何かしら反応するんじゃないかと

結果、全く効果ナシ
これじゃ本当に、みやのっちはただの友達じゃないか
そうなのか?
果たして本当にーーーそんな事があるんだろうか

俺は野々村と、ずっと一緒に部活を共にしてきたが
アイツが悩んだり悔しがったりしているのを見た事がない。
キャプテンとして、いつも堂々として
チームが負けそうになっていても、平然と構えている。

その余裕が、俺たちチームメイトを安心させたし
なにより、アイツならやってくれると信頼もできた。

けれどもーーーそれはどこか完璧すぎて
最近はそれが妙に、気になった。

アイツ、無理してんじゃねえのか?
そんな気がしたんだ。
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