次期社長の溺愛が凄すぎます！

遠い目をしていたら、藤宮さんが近づいてきた。

「まさかこんなところで会うとは思っていなかったが、元気そうで何よりだ。今日は顔合わせだけか？」

「いえ。こちらで三日ほど仕事をさせていただく事になっています」

とはいえ、業務そのものをする訳じゃなく、藤宮重工の総務部と、藤エンジニアリングの相違点について習う感じ。

子会社は親会社のやり方に合わせていかなくちゃならないからね。

ニコニコ営業スマイルで答えていたら、何を思ったのか、藤宮さんは私の頬に触れてきた。

びっくりして目を丸くする私と、藤宮さんの冷静な視線が交わる。

「では、定時で上がれるな。久しぶりに人と食事がしたくなった。誘ってもいいだろうか」

何でだよ！というツッコミを入れるより先に、原さんがポンッと手を打った。

「いいですね！　歓迎会しましょう、歓迎会。和食がいいですか、洋食がいいですか？」

「……和食にしよう。場所は後でメールを送ってくれればいい」

そう言って、藤宮さんは私の頬から手を離すと、そのまま去っていった。

その姿が見えなくなると、興味深そうに私を見ている原さんと目が合う。

「お、お若い部長さん、ですね？」

「今年32歳。独身。名前の通り、藤宮重工の直系血族です。ゆくゆくはこの会社の社長ですから」

「えーと……32歳とか独身とか、次期社長とか、その情報、必要です？」