次期社長の溺愛が凄すぎます!
「な……っ! そ、そんなことはないです! 何を言っているんですか!」

「それはこちらのセリフだろう」

そうですね! でもツッコミは入れないでくださいよ!

「まぁいい。麻衣子は天邪鬼なところもあるから……」

藤宮さんが言いかけて、何かに気がついたように立ち止まると、私の腕を掴んで引き寄せる。

「麻衣子、違う道を――」

「圭一さん!」

涼やかな声が左手から聞こえて、綺麗な女の人が近づいてきた。

その女性は腰まである真っ直ぐな黒髪で、目はパッチリと可愛らしい顔立ちをしている。

「お久しぶりです。私、ずっとお会いしたかったんですよ」

彼女はにこやかに近づいてきたけれど、藤宮さんは私を背中に隠してしまうから見えなくなった。

小さく舌打ちも聞こえたような気がする――

「僕は二度とお会いしたくなかったですが。お約束はお忘れですか?」

表情は見えない。でも、藤宮さんの纏う雰囲気が一気に冷たくなったのはわかった。

「そんな……どのようなお約束でした? 私、そんなに物覚えの悪い方ではないのですけれど、圭一さんと交わした約束であれば、忘れないと思うのですが」

「どうも今日は偶然の様子ですから見逃して差し上げますが……」

「ええ。偶然です。きっと私と圭一さんは運命の赤い糸で結ばれているんですよ。あの時にもそう申し上げましたでしょう? 覚えておられますか?」

藤宮さんの声を遮るように、女性は楽しそうに言葉を繋げている。

藤宮さんがちらっと私を振り返りかけ、大きく息を吸った。
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