次期社長の溺愛が凄すぎます!
***


新事実が発覚したのは、大衆居酒屋を珍しがる藤宮さんをからかって飲んでいた時のこと。

しばらく黙り込んでいた彼の、何の脈略もなくポツリともたらされた言葉でだった。

「あの時、彼女は妊娠していたはずなんだが」

せっかく何も考えないようにしていたのに、蒸し返さなくてもいいと思うんだけど。

ムッとしてビールを飲み干すと、おかわりを注文して目を細める。

「彼らの子供ですか?」

「……そうだね。当時、彼女が“そういうこと”をしていたのは、彼に限られていたようだから」

「ふうん?」

我ながら声が低くなっている。

不機嫌になっていく私に気付いているんだろうに、藤宮さんは店内の様子を見るように、そっぽを向きながら言葉を続ける。

「彼女は勘当されて彼と一緒になり、彼は地方に飛ばされたはずだ。そして俺との念書で、二度と姿を現さないことを約束させたんだがな」

「へぇえ?」

届いたビールをごくごくと飲んで、おつまみのチヂミを食べてから、まだビールジョッキを傾ける。

「あの。私にはもう関係ない話なので、あまり聞きたくないんですが」

さすがに聞いていられなくて、またビールを飲み干すと、ジョッキをテーブルに叩き付けるようにして置いた。
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