次期社長の溺愛が凄すぎます!
ガゴンと、なんか妙な音がしたけど、この際気にならない。

「関係なくはないだろう。麻衣子も当事者だ」

決して視線を合わせないようにしている、藤宮さんの無表情の横顔を睨み付ける。

そうですよ。私も当事者ですよ。

当時、たぶん、私は奏斗と彼女として付き合っていたはずなんです。

殆どデートらしいデートもしていなかったし、普通に彼氏と彼女の“お付き合い”をしていたかと言われれば、ちょっと違うのかもしれないって感じるけど。

でも、私は奏斗を好きだったから付き合っているつもりだった。奏斗を信じて、好きだと思ったから……。

すでに社会人で大人だった奏斗は、初めて男の人と付き合う、初心者の私じゃ物足りなかったのかもしれなかったけど、ゆっくり待っていてくれてるんだと思って、彼のドライなところと軽い所に甘えていた私もきっと悪いのかもしれない。

本当に、初めて好きになった人だったのに。

「今更、蒸し返さなくてもいいじゃないですか。忘れていたいのに」

それは正直な本音だ。

そう言った途端、藤宮さんが私を振り返る。

「俺もそう思っていた。だが、君のは忘れたんじゃなくて、きっと蓋をしただけだろうと気づいた。それではダメだ」

彼の視線は怖いくらいに真っ直ぐで、そして鋭い。
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