次期社長の溺愛が凄すぎます!
***


そうして始まった藤宮重工80周年記念祝賀会のもと、繰り広げられるのは挨拶大会。

まぁ、関係各社揃っているんだから、それも普通というか。

なのに、藤宮さんは無表情で私の隣にいて、のほほんとしているのが、なんとなく感じられる。

「藤宮さんは挨拶にいかなくてもいいんですか?」

声をかけると困ったように見下ろされた。

「俺の役職はまだ部長。他社の役員に紹介もなしに挨拶に行ったら少し問題かな。社長について回れば挨拶するが、今日は親父に近寄りたくない」

だからって、私と一緒に壁際にいる必要もないんじゃないかな。

「呼ばれたら行かなくてはならないが、極力行きたくないな。恐らく……」

「元財閥系の社長令嬢に紹介されるから?」

ニヤニヤして顔を覗き込むと、ムッとした顔をされる。

「他人事だと思って楽しんでいるだろう」

「他人事ですもん。だから言ったじゃないですか、悪女役やりますかって。付け焼き刃でもなんとかなると思うんですよね~」

「そんなことされたら、藤宮の息子さんに“良縁を勧めなくては”なんてことになる」

……藤宮さんも、想像力豊かな人だよね。

「実際、以前なった。婚約破棄になった理由を公開したわけじゃないが、噂なんてものに戸はたてられないからな。お見合いの押し売りが激しかった」

それは御愁傷様である。
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