次期社長の溺愛が凄すぎます!
「大企業の息子は大変ですねぇ」

しみじみ言うと、フッと息を吐きつつ藤宮さんは視線を逸らして会場の方を見た。

「麻衣子は何も言われないか? 男より女性の方がうるさく言われそうだが」

「うちは跡取りがいますし。孫もできて、父はボンヤリ、母はマイペースですから。絶対に藤宮さんの方が背負って立つものが重そう」

そもそもうちは、異性と付き合う素振りも見せない長女に諦めモードな気もする。

「普段はそうでもない。確かに俺は一人息子だし、30過ぎてから、それとなく将来を考えろと言われ始めたが……また見合いを持ち込むあたり、うちの親父は懲りていないだけだ」

どこか達観するような言葉に、藤宮さんを見つめた。

たまにあたたかみを感じる視線は、今は冷めたように会場を眺めている。

支社も数にいれると、何千、何万人といる大企業の跡取り息子。常に無表情で感情の起伏はわかりずらいけれど、何も考えていないわけではないだろう。

「藤宮さん、結婚するつもりですか?」

小さな呟きは、ちゃんと聞こえていたらしい。訝しげに見下ろされた。

「……将来的にはな。お前はどうなんだ?」

「そうですね~。昔は25歳くらいになったら結婚をして、子供はふたりくらい、ゆくゆくは一戸建ての家を建てて、なんて考えてました」

まだ大学生時代には、そんな夢もあったかな。
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