次期社長の溺愛が凄すぎます!
でも、男に幻滅しちゃっていて。いたらいたで面倒なんだろうなぁって、考えちゃってる自分がいて。

腕組みしつつ、何気なく会場内を見回した。

貞操は守るものだとしつけられていたけど、気がつけば27歳にもなって、キスもしたことがない処女が出来上がっていたわけで。

あ、でも、幼稚園の時に、仲の良かった男の子にほっぺにチューをしているから、あれはキスのカウントに入るのかな。

それが入ったら、かろうじてキスは経験者だ。

「藤宮さん。キスって唇にしないといけないものでしょうか?」

そう聞いても返事がないから、不思議に思って彼を見ると、無表情に固まっている藤宮さんがいた。

面白いくらい、微動だにしない。

しばらく黙っていたら、藤宮さんはふいっと視線を外して咳払い、真剣な表情をつくってから再度私に向き直った。

「してほしいのか?」

「いや、そうじゃないですけど」

顔の前で手を振ると、思い切り脱力される。

「男にそんなことを言うもんじゃない。興味があるのかと思われるぞ」

ああ、それもそうかも。さすがに身内以外の人に振る話でもないか。

「すみません……」

「構わないが、どうしたんだ、急に」

「いやぁ、私、幼稚園の時に男の子に頬っぺチューはあるけど、その他ってしたことないなぁって……」

そう言った瞬間、藤宮さんは口をポカンと開けたかと思ったら、身体をのけ反らせて、後ずさった。
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