次期社長の溺愛が凄すぎます!
「なんかそれ、地味に傷つくんですが」

「なん……いや、ちょ……っと待ってくれ」

こんなに慌てる藤宮さんは初めて見た。

どうしたんだろうとおとなしく待っていたら、肩に手を置かれる。

「過去にも付き合った男は、いるよな?」

男とは“奴”のことだろうか。私には奏斗しか恋人はいなかったよ。

思わず目を細めて、何を聞いているのか考えてみたけどわからない。

わかるのは、藤宮さんは真剣らしいってことかな。

「いましたよ、ひとり。こっちは就活していたし、相手は残業ばかりで、たまのデートはゲーセンかファミレス。卒業旅行はドタキャンされて友達と行きました。だから、次のゴールデンウィークには旅行しようって約束して、でも、直前に別れました」

そんなあれやこれや、藤宮さんは気にしないだろう。

そう思っていたんだけど、無言で指の甲を使ってスルリと頬を撫でられてびっくりした。

驚いた私の視界には、悲しそうな藤宮さんがいて、次にぷにぷに頬を摘ままれる。

「えーと……」

これって、慰められてるのかな。全くもって意味がわからない。

藤宮さんは、たまに突拍子もないことを始めるよね。

「じゃあ、俺とデートをしよう」

「どういった思考回路で、その結論に至ったんです」

軽く睨むと苦笑を返された。
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