次期社長の溺愛が凄すぎます!
「とにかく麻衣子、そんな話は軽々しく男にするものではない。下手するとつけこまれるだけだ」

「え。そうなんです?」

「そうだ。お前は少し迂闊なんだな。簡単に肌を触らせるのも考えものかも」

ぷにぷに人の頬っぺたつまんでいる人の言うことじゃ……あ。そうか。

「いつまで人の頬をつねっているんですか。離してください」

手をかけて止めようとしたら、その手を掴まれた。

「あ、あの……」

何故か藤宮さんは得意そうに私の手のひらを広げると、指と指を絡ませて握り直す。

「頼むからこのままで、父が来た」

そう言われて、藤宮さんが見た方向に視線を向かわせると、つかつかと真っ直ぐこちらを目指してやってくる長身の男の人が見えた。

ブルーグレイの三つ揃えのスーツをパリッと着こなして、少し白髪混じりの髪は少し長め。自然に任せているようでいてお洒落にセットされている。

日に焼けた素肌は健康そうで、顔立ちは口髭のせいで印象はだいぶ違うけど、よく見たら目元は藤宮さんそっくりだ。

「こんなところにいたのか、圭一」

声は藤宮さんより高めだ。

「お元気そうで何よりです、社長」

きっちり礼儀正しく頭を下げる藤宮さんに倣って、私も社長に頭を下げる。

顔を上げると、バッチリ社長と目が合った。
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