次期社長の溺愛が凄すぎます!
「こちらのお嬢さんは? 紹介してくれないのかね」

そう言った社長の視線は冷え冷えしていて、非難しているようにも感じる。

これは歓迎されていないんだろうなぁ、と思っていたら、藤宮さんが握っていた手を引いて、私を半歩下がらせた。

「彼女は、斎藤さんです」

「斎藤……聞いたことはないな。どちらの会社のお嬢さんだったかな」

「うちの会社ですよ」

……無表情に淡々と答えた藤宮さんだけど、きっと社長が求めた答えとは違うんだろうなぁ。

きっと社長は『どちらの会社の令嬢なのだね、ふっふっふっ』的に聞いているんだろうに、藤宮さんは『うちの会社のグループ会社に勤めてますよテヘペロ』と答えてる。

現に、社長は少しイラッとした。

「今日、松代商事のお嬢さんを紹介すると伝えていただろう。パートナーを連れてくるとはどういうことだ?」

「伺っています。他意はありませんよ。僕が、彼女を連れてきたかっただけです。松代商事のお嬢さんは、あちらの方でしょう? 本気ですか、お父さん」

藤宮さんの手が会場に向けて差し伸べられ、社長がつられてそっちを振り返った。

私もその手の先を見て、瞬きする。

見えたのは、複数の男性に囲まれた、妖艶な黒いドレスの女性だった。
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