次期社長の溺愛が凄すぎます!
「再会してからは、確かに数週間……だな」

藤宮さんの視線が、ふっと遠ざかっていく。

何を考えているのかわからないけど、しばらくしてから彼の意識が私の方に戻ってきた。

「麻衣子は一目惚れを信じる?」

「一番信用ならない言葉です。一目見て好きになりました、なんて、どこのおとぎ話ですか」

「うん。瞬時に秒殺された気分になったが、予想通りで逆に面白い」

無表情に面白がられてもなぁ。どーしろっていうんだ、あなたは。

「俺も信じたことはない。だが、実際にそうだったんだろうと思う」

「だったんだろう? めちゃめちゃ他人事ですね」

「気がついたのが、全てが終わってしまった後だった。しでかした後になって気がつくとは間抜けな話だが、あの日から、君のことは忘れたことはなかったよ」

「へ……?」

それこそ、私は間抜けな顔をしていたことだろう。

藤宮さんは、すごーく昔のことを、懐かしむように話している気がするんですが。

それはもしかして、私とあなたが、本当に初めて出会った日のことを言っている?

あなたが“婚約者”に浮気されて、私は“彼氏”の浮気を知らされた日の……。

そんなことはありえるんだろうか?
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