エリート外科医と過保護な蜜月ライフ
先生は私の足の状態を診たあと、ふとベッドに置いてある雑誌に目を向けた。

「だから、飲料メーカーの雑誌なのか」

「あ、はい。ここの本屋に売っていて……。普段は、経済誌を読まないんですけど、努力しなきゃって思ったんです」

私は雑誌を手に取ると、それをパラパラとめくる。

「努力?」

「先生の言うとおりってことです。私、会社に必要とされる人間になれるように勉強します」

そう考えたら、入院生活もリハビリも、意味あるものに思えてきて、最初の頃のような自暴自棄な気持ちはない。

ただ、不安はたくさんあるから、こうやって先生に話すことで、自分を鼓舞しているのかもしれない。

「小松さんは、思ったとおり前向きな女性だな」

「え?」

先生に小さく微笑まれ、私の心は高鳴る。どうして彼の笑顔に、気持ちが揺れるのだろう。

「仕事で頑張ってきた人だろうとは、思っていた。でなければ、会社からこんな個室は与えられないし、きみもあれほど言わなかっただろうから」

「先生……。そんな風に、思われていたんですか?」

「そうだ。だから、小松さんには前を向いてほしかった。あのときのきみには、酷だったかもしれないけど、優しい言葉は違うと思った」
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