続*もう一度君にキスしたかった

「行きましょうか」


と、朝比奈さんの手に私の手を重ねて、歩きだした。
私たちふたりだけでは、キッズコーナーは場違いだ。


歩いていて、つい笑いが込み上げた。
ふふ、と含み笑いをすると、朝比奈さんの拗ねた声が飛んでくる。


「真帆まで笑う」

「だって……ふふっ、朝比奈さん一生懸命なのに」

「僕の方は、子供はそんなに嫌いじゃないんだよ? なのになぜかいつも泣かれる。そんなに怖い顔してるかな」


繋いだ手とは反対の手で彼は自分の頬や顎を撫で、不思議そうに首を傾げる。


「そんなことは全然ないんですけどね……朝比奈さん、ラッピング以外にも不得意なのあったんですね」

「……どれだけ笑顔で接しても、泣かれちゃうんだよ」


たまに、この人出来過ぎて怖いと思う時があるけれど、慌てふためく朝比奈さんも人間味があって嫌いじゃなかった。なんて言ったら、真剣だった朝比奈さんには悪いかもしれないけれど。

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