続*もう一度君にキスしたかった

寄り添って歩きながら、彼が私の耳元に口を寄せた。


「楽しみだね」


その囁きが、あまりに甘くて優しくて、かあっと顔中が熱くなる。


「すっ……すぐ、て意味じゃないですよ」

「わかってるよ。そのうちね」

「い、いつか」

「うん、いずれね」


ちゅっ、と熱い耳の淵に彼の唇が触れた。


「ちょ、朝比奈さん、ほんと、くっつかないで恥ずかしい」

「ん、じゃあ早く帰る?」

「なんでそうなるの……」


朝比奈さんの愛情表現は、本当に時折度を過ぎているから私の方は気が気じゃない。


その後、改めて店の客の入りなどを確認し、個人的なショッピングも楽しんでから帰路に着く。


そうこうするうちに、私がすっかり忘れてしまっていた話題があったのだが……彼の方はしっかり覚えていたらしい。


リビングでカーディガンを脱ぎ、コーヒーでも淹れようかとキッチンに向かおうとしたその腰を、がっしりと捉えられた。


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