続*もう一度君にキスしたかった


ずっと横這いでいつ下がるかとヒヤヒヤしていたから、涙が出るほど嬉しかった。
実際、泣いた。


数字を見るのは好きではないが、今回ばかりは本当に嬉しくてずっとデータを眺めていた。
いつもはさらっと確認する程度の細かいところまで目で追っていて、その時にふと気づいたことがあった。


各店舗ごとの売上推移を見つめながら次年度の為の対策を考えていたのだが、ぐんと成績を伸ばした店舗や催事に、ちょっとした共通点を見つけてしまったのだ。


朝比奈さんと関わったところばかりのような気がした。


「真帆? どうかした?」


朝比奈さんに声をかけられ、我に返る。
ケーキを並べたまま数秒考え込んでしまっていた。


「なんでもないです。朝比奈さん、ケーキどれがいいですか?」

「僕よりお父さんお母さんに選んでもらって?」


関わったといっても、私が朝比奈さんにぽろっと相談してしまったり、朝比奈さんが何気に言った言葉を私が参考にしたり、その程度だ。
それに朝比奈さんは上司だから仕事の相談をしても当然だし、彼が助言しているのは何も私だけではない。


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