続*もう一度君にキスしたかった


彼の方では、大阪支社が力を入れていた菓子博でのオランジュショコラとのあれこれがイーブンという結果だった。
売場の陣地争いはオランジュショコラが、キッズ向けゲームコーナーではうちのイベントの方が盛況だったという話だ。


木藤さんがマネージャー復帰を決めた、という話も聞いた。
その環境を整える為に由基さんは尽力していた。


木藤さんとは、あの怪我の一件から一度だけ、大阪で顔を合わせている。
菓子博の開催期間に、休みを利用して由基さんと一日だけ見に行ったのだ。


その時に彼女も予定を合わせてくれていて、ふたりで話をする機会に恵まれた。
プライベートで訪れたのに菓子博に足を踏み入れた途端、笹木さんに捕まって彼は結局仕事に小一時間ほど時間を取られていたのだ。


「なんていうかね、朝比奈くんってニコニコ笑いながらなんだかんだ自分の構想する通りに持って行っちゃうところあるわよね。ぞっとするわー」


マネージャー業復帰のことを彼女に尋ねてみたところ、返って来た言葉がこれだった。


「はは……そう、ですね」


やっぱりそうなのか。
私も、彼に強引に促されたわけでもないし嫌々従ったわけではないけれど、いつのまにやら同棲の上で親公認だ。


確かに、彼女と同じような言葉がちらりと頭を掠めたのは否めない。

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