続*もう一度君にキスしたかった
「まあ、私だって別に彼の思惑通りに動くつもりはないわよ。復帰して、少し経ったら寿退社することあるかもしれないしね」
「え、木藤さん彼氏できたんですか?」
「まだだけど! 朝比奈くんは多分、私が先陣切った前例としてこのまま定年退職まで勤める方が都合が良いと思ってそうだけどそうは問屋が卸さないってこと。私だって結婚したいわよ、そのうち」
「あはは。いくら彼でも、まさか定年とか先のことまで考えたりは……」
「わからないわよ。吉住さんも気づいたらすっかり朝比奈君の手のひらの上でした、なんてことに……」
「はは」
なんだかもうそんな気がしているとは言い難く、笑って誤魔化した。
「吉住さん、朝比奈くんとは? 彼の様子からだと今すぐでも結婚しそうだなって思ってたんだけど」
「えーっと……そうですね……いずれ?」
「え。まさか吉住さんの方が躊躇ってるとか?」
「いえそういうわけじゃ」
「わかる! なんかどっか腹黒いとこあるもんね、躊躇うのわかる!」
「いえいえいえ違いますって」
酷いなあ。
由基さん、腹黒いとか思われてるよ……確かにちょっと怖いときあるけど。
「なんかちょっと、自分の仕事で区切りが欲しいかなって思ってます。今期、まず精一杯、駆け抜けてから、ですね」
まず、この一年。
彼の力を借りながらでもいいから、出来る限界まで精一杯頑張って、昨年クリアした分また上がった予算を再び達成させる。
それが、ひとつのわかりやすい目標でもあった。