続*もう一度君にキスしたかった
木藤さんと別れて彼とまた合流し、私は木藤さんと初めて会った時からなんとなく気になっていたことを聞いてみた。
「木藤さんって、由基さんが昔好きだった人とかですか?」
「ごほっ!」
あ、動揺した。
パビリオンの間を歩きながら、テイクアウトのコーヒーに口を付けていた彼は、盛大に咽た。
彼はたとえそうじゃなくても、木藤さんに対して同じ対応をしたとは思う。
だけど、木藤さんの件に関わる時の空気に少し……女の勘が働いたのだ。
今も好きじゃないのかとか、そういうことじゃない。
もっと懐かしさのような情のような、曖昧な、それでいて優しい空気だ。
「な、なに、急に……げほっ」
「なんとなく、前からそう思ってて……大丈夫ですか?」
ここまであからさまに動揺するのは珍しい。
多分図星というやつだ。
背中を丸めて苦しそうに咳き込む彼にハンカチを差し出すと、咽すぎてちょっと涙目になった彼に手首を掴まれ、そのまま遊歩道から外れた人気のない木の傍まで連れていかれた。