続*もう一度君にキスしたかった
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「あー、疲れた! これで一段落ですよね? そうですよね?」
会社に辿り着いて、佐々木さんがデスクに荷物を置きキャスター付きの椅子に力尽きたように腰を落とした。
いつも身だしなみに気をつけて休憩時間には化粧直しに余念がなかった彼女だが、今はそこまで気が回っていない。
お互い様だが、肌はテカっているし髪もどこかくたびれた印象だ。
「ありがとう。ほんとにお疲れ様」
「吉住さんに付いて回るようになってから毎日足が棒ですよ、かっちかちに固くなって重いのなんの」
よほど我慢していたんだろう、デスクの下でぽいぽいっと彼女の足がパンプスを脱ぎ捨てる。
まあ、オフィスに残っているのは今は私と彼女だけだから、構わないけれど。
「絆創膏ある?」
「大丈夫です。すっかり必需品で財布に入れてます」
「良かった。これで本当に今日は上がれるから……ごめんね遅い時間まで。足を休ませてから帰った方がいいよ。コーヒー淹れてくるから」
繁忙期クライマックス、最後の最後でトラブルがあり、彼女まで巻き込んでしまったのだ。
ホワイトデーの翌日だ。
本当なら今日はもう少し早く上がれる予定だった。
「私のことはいいです、足が楽になったら勝手に帰ります。それより今日、デートだったんじゃないんですか」