続*もう一度君にキスしたかった
「あー……うん」
「朝比奈さん、待ってらっしゃるんじゃないですか。どうぞ早く行ってください」
約束の時間に遅れる、とは伝えてあるものの、すっかり待たせてしまっていた。
「どーぞ、お気になさらず。繁忙期も終わってやっと久々のデートなんでしょう?」
「わかった。じゃあ行くね」
「顔赤いですよ」
にやにやと笑いながらのからかいに、ますます熱くなりながら、「お疲れ様です」とオフィスを後にする。
真冬の凍るような寒さは和らいでいる。
それでも風が吹けば身をすくませるほどには三月の夜は冷えるはずなのに、私の胸は高鳴っていて寒さを感じなかった。
大通りですぐにタクシーを捕まえて乗り込むと。
「ペニンシュラまで」
運転手に行き先を告げて、小さく深呼吸をした。
ホワイトデーの翌日。
今日は、特別なデートだときっと彼は意識している。