続*もう一度君にキスしたかった
言葉にした途端、また新しい涙が零れた。
後悔はない、ただ、なんだかとても温かくてふんわりとした安心感が押し寄せた。
帰る家を見つけたような、そんな気持ちだ。
私の左手の薬指に、彼が指輪をはめた。
そして、上半身を屈めてその指にキスをする。
それから、ほうっと熱い溜息がかかったかと思ったら、いきなり強く引き寄せられた。
「わっ、よ、由基さん? んっ……」
いきなり、深く口づけられて舌が口の中を一巡する。
すぐに唇は離れたけれど、私の体温を確かめるかのようにしっかりと抱きしめられている。
「やっと捕まえた。長かった」
「ご、ごめんなさい」
「ほんと……長かった」
温かい体温と香りに包まれながら、くすっと笑った。
物凄く、実感のこもった言葉だったから。
さぞ、長く感じたのかもしれない。
私だって本当は、気付いている。
私を自由にしながら少しずつ、綿でくるむようにやんわりと外堀を埋められ、私の仕事がうまく回るように手助けもした、不自然じゃないギリギリの範囲で。
私が早く、区切りだと思えるように。
それが見事過ぎて、ぐうの音も出ない。
私が気付いてると、彼はわかっているのだろうかいないのだろうか。
それはわからないけれど。
私は、彼の手の中に大人しくとどまる鳥で居ようと決めた。
それで、彼が安心して笑ってくれるなら。
「由基さん」
名前を呼ぶと、彼の手が緩んだ。
緩んだ腕は、私を捉える籠のようなものだ。
「キスして? もう一度」