【完】恋歌
むせ返る程濃い霧が辺りを覆ったかと思ったら、それはそのまま凝縮され、一人の若い男の姿への変わって行った。
すぐに、それが自分のターゲットだと分かった。
ーーーーーーーーーヴァンパイア…。
出逢うのは初めてなのに、何処か懐かしいその姿に彼女はごくり、と息を飲んだ。
男は口の端に綺麗な笑みを浮かべ、まるでどこかの紳士のように、深々とお辞儀をして見せた。
そして…此方に向き直ってから、もう一度…今度はニコリと妖しい微笑みを寄越した。
冷たく揺れる紅の瞳。
人形のような整った顔立ち。
そして…意味深な態度…。
決戦まで…………あと…………。