《完結》君と稽古した日々 ~アーサ王子の君影草~【番外編】
「リーナ、どうした? どこか痛いのか? ……怪我してるなら医務室に…」
屈んでリーナの顔を覗き込むジュリアン。
「ちがうの……っ…私の……せいで、イリアさまが…!」
そこまで言うとリーナはしゃくりをあげて更に泣き出してしまった。ゆっくりと歩み寄って来たジュストベルを見上げると、何とも言い表せない程の悲痛で悲しげな表情を見せた。
「じい様、一体何が…」
「……ジュリアン。今直ぐに向かって欲しい所があります」
「えっ? 何でだよ。こんな状態のリーナをほっとけないし、それにイリア様やアーサは何処にいるんだ!? 無事なんだろ?」
疑問を投げかけるとリーナの腕にますます力が込められた。ジュリアンはリーナの背中を擦ってやりながらジュストベルの返答を待った。
「……」
「なあ、じい様!!」
「ジュリアン、もう一度お願いします。今直ぐ庭園の間へ向かって下さい」
ジュストベルの曖昧な答えに苛立ちながらも奥歯を噛み締める。
「……母さんは?」
「サリベルはエテジアーナ様の所に。ジュリアンはラインアーサ様の所に、行って下さい。今直ぐです!」
「おにいちゃん……っ…アーサさまの事、おねがい…!」
いつもに増して緊迫感のある雰囲気のジュストベルと泣きすぎて過呼吸を起こしかけているリーナを交互に見ると、ジュリアンは立ち上がった。
「……わかった! じゃあじい様はリーナを医務室に連れて行ってくれ。俺は庭園の間に行けばいいんだな?」
「お願いします」
「了解。全力疾走で向かう! あ、廊下走っても今日はお咎めなしだからな!!」
「もちろんです。頼みますよ……」
軽く冗談を飛ばすとジュストベルはほんの少しだけ口角をあげた。
一体この王宮で何が起こったのだろう。
詳細は未だ不明確だが、嫌な予感と不安がジュリアンの頭部を圧迫し刺すような痛みが生じる。
庭園の間迄の距離が物凄く長く感じた。それでも速度を緩めずジュリアンは誰もいない廊下を走り続けた。
王宮本殿の三階のさらに上。
長い廊下を進み、角を一つ曲がって細い廊下に入る。その突き当たりの透かし扉を開ければ中庭が広がる庭園の間だ。流石に息を切らしながらジュリアンは扉の前で膝に手をついた。
「は…っ……はぁ……っ…ここに、アーサがいるのか…?」
直ぐに呼吸を整え庭園の間に足を踏み入れる。見上げると空は漆黒の闇色だった。
屈んでリーナの顔を覗き込むジュリアン。
「ちがうの……っ…私の……せいで、イリアさまが…!」
そこまで言うとリーナはしゃくりをあげて更に泣き出してしまった。ゆっくりと歩み寄って来たジュストベルを見上げると、何とも言い表せない程の悲痛で悲しげな表情を見せた。
「じい様、一体何が…」
「……ジュリアン。今直ぐに向かって欲しい所があります」
「えっ? 何でだよ。こんな状態のリーナをほっとけないし、それにイリア様やアーサは何処にいるんだ!? 無事なんだろ?」
疑問を投げかけるとリーナの腕にますます力が込められた。ジュリアンはリーナの背中を擦ってやりながらジュストベルの返答を待った。
「……」
「なあ、じい様!!」
「ジュリアン、もう一度お願いします。今直ぐ庭園の間へ向かって下さい」
ジュストベルの曖昧な答えに苛立ちながらも奥歯を噛み締める。
「……母さんは?」
「サリベルはエテジアーナ様の所に。ジュリアンはラインアーサ様の所に、行って下さい。今直ぐです!」
「おにいちゃん……っ…アーサさまの事、おねがい…!」
いつもに増して緊迫感のある雰囲気のジュストベルと泣きすぎて過呼吸を起こしかけているリーナを交互に見ると、ジュリアンは立ち上がった。
「……わかった! じゃあじい様はリーナを医務室に連れて行ってくれ。俺は庭園の間に行けばいいんだな?」
「お願いします」
「了解。全力疾走で向かう! あ、廊下走っても今日はお咎めなしだからな!!」
「もちろんです。頼みますよ……」
軽く冗談を飛ばすとジュストベルはほんの少しだけ口角をあげた。
一体この王宮で何が起こったのだろう。
詳細は未だ不明確だが、嫌な予感と不安がジュリアンの頭部を圧迫し刺すような痛みが生じる。
庭園の間迄の距離が物凄く長く感じた。それでも速度を緩めずジュリアンは誰もいない廊下を走り続けた。
王宮本殿の三階のさらに上。
長い廊下を進み、角を一つ曲がって細い廊下に入る。その突き当たりの透かし扉を開ければ中庭が広がる庭園の間だ。流石に息を切らしながらジュリアンは扉の前で膝に手をついた。
「は…っ……はぁ……っ…ここに、アーサがいるのか…?」
直ぐに呼吸を整え庭園の間に足を踏み入れる。見上げると空は漆黒の闇色だった。