《完結》君と稽古した日々 ~アーサ王子の君影草~【番外編】
すらりとした長い手足、伸びた身長はジュリアンを追い抜いている。
透き通った瑠璃色の双眸から零れる涙は止まることを忘れたかの如く、淡く幼さが残る頬を濡らし続けた。
「……アーサ。一体この王宮で何があった? 話せるか?」
確信に触れた途端、ラインアーサの表情が悲しみに歪む。
「……っ」
「……俺は、アーサが無事で安心したんだぜ。とにかく今は安全な場所へ行こう。医務室にじい様達がいる、お前も手の傷ちゃんと治してもらえ」
それでもジュリアンはラインアーサの身が無事であった事に安心し、一息つこうとした。
しかし───
「嫌だ」
「嫌だって、こんな時に何言って…」
「だって…っ姉様が……姉様が、消えたんだ…」
「消えた…って、イリア様が? 何処へ?」
「分からない。でも俺の……目の前で…っ」
「う、嘘だろ? 消えたって、本当に消えたのか…? もしかしたらまだこの中庭のどこかに…」
「俺だって探した!! この中庭の隅々まで……何度も! でも何処にも居ないんだ…!」
目の前で突然姿を消すなどにわかに信じられない。しかしラインアーサが嘘をついている訳では無い事位分かっている。
「そ、そんな事って、あるのかよ」
「姉様は連れていかれた……」
「誰が、イリア様を…」
「声が聞こえた」
「声って?」
「……目の前に突然…っ、真っ黒な穴が開いて……そこから〝みつけた〟って不気味な声がした……。はじめは俺と姉様で母様とリーナを守ったんだ。でもその穴はすごい勢いで何でも吸い込んで行って……みんなの大切な物を何もかも…っ」
「なんだよそれ…!」
「気を取られてる間に中から伸びてきた腕に掴まれて俺ごと引き込まれそうになった。その時にまた声が聞こえたんだ。〝捕まえた、大事な人質〟って…」
「人質!?」
「確かにそう聞こえた。でもそこに姉様が……姉様が俺の事を助け出してくれて……そのまま俺の代わりに穴の中に…っ……」
ラインアーサは耐えられない悲しみと突き上げてくる怒りに歯噛みし、拳を震わせた。
「その穴は……どう、なったんだ…?」
「消えた。俺の目の前で、跡形もなく…っ」
「そんな…!」
「……リーナには怪我を負わせて、母様も具合が悪くなって……俺、みんなを守るどころか何も出来なかった。本当に……何も…っ!」
膝を折り泣き崩れるラインアーサ。
「アーサ!!」
透き通った瑠璃色の双眸から零れる涙は止まることを忘れたかの如く、淡く幼さが残る頬を濡らし続けた。
「……アーサ。一体この王宮で何があった? 話せるか?」
確信に触れた途端、ラインアーサの表情が悲しみに歪む。
「……っ」
「……俺は、アーサが無事で安心したんだぜ。とにかく今は安全な場所へ行こう。医務室にじい様達がいる、お前も手の傷ちゃんと治してもらえ」
それでもジュリアンはラインアーサの身が無事であった事に安心し、一息つこうとした。
しかし───
「嫌だ」
「嫌だって、こんな時に何言って…」
「だって…っ姉様が……姉様が、消えたんだ…」
「消えた…って、イリア様が? 何処へ?」
「分からない。でも俺の……目の前で…っ」
「う、嘘だろ? 消えたって、本当に消えたのか…? もしかしたらまだこの中庭のどこかに…」
「俺だって探した!! この中庭の隅々まで……何度も! でも何処にも居ないんだ…!」
目の前で突然姿を消すなどにわかに信じられない。しかしラインアーサが嘘をついている訳では無い事位分かっている。
「そ、そんな事って、あるのかよ」
「姉様は連れていかれた……」
「誰が、イリア様を…」
「声が聞こえた」
「声って?」
「……目の前に突然…っ、真っ黒な穴が開いて……そこから〝みつけた〟って不気味な声がした……。はじめは俺と姉様で母様とリーナを守ったんだ。でもその穴はすごい勢いで何でも吸い込んで行って……みんなの大切な物を何もかも…っ」
「なんだよそれ…!」
「気を取られてる間に中から伸びてきた腕に掴まれて俺ごと引き込まれそうになった。その時にまた声が聞こえたんだ。〝捕まえた、大事な人質〟って…」
「人質!?」
「確かにそう聞こえた。でもそこに姉様が……姉様が俺の事を助け出してくれて……そのまま俺の代わりに穴の中に…っ……」
ラインアーサは耐えられない悲しみと突き上げてくる怒りに歯噛みし、拳を震わせた。
「その穴は……どう、なったんだ…?」
「消えた。俺の目の前で、跡形もなく…っ」
「そんな…!」
「……リーナには怪我を負わせて、母様も具合が悪くなって……俺、みんなを守るどころか何も出来なかった。本当に……何も…っ!」
膝を折り泣き崩れるラインアーサ。
「アーサ!!」