《完結》君と稽古した日々 ~アーサ王子の君影草~【番外編】
咄嗟にラインアーサをかき抱いた。そうしないと今にも崩れてしまいそうな程脆く、繊細で儚げに思えたのだ。
「……っく…、ジュリ……。俺……悔しい、情けない…」
「……」
そんな事は無いと否定したいのだがジュリアンもまた同じ気持ちだった。
理由はどうであれ、窮地に立たされていた主のすぐ側に居れなかった事。助ける事が出来なかった自分が悔しくて情けなくて、ラインアーサにかける言葉が見つからなかった。
この後どんなに説得しても中庭から頑なに動こうとしないラインアーサの背中を擦り、落ち着くまで宥め続けた。
気付くとラインアーサは糸が切れたの如く意識を失っていた。あまりにも衝撃的な出来事を目の当たりにし、限界に達したのだろう。
先程までこの中庭に吹き荒れていた風もラインアーサの意識と共に凪いだ。
「アーサ? 大丈夫か?! 今医務室に…」
「私が寝室まで運ぶよ」
優しげな低音の声に振り向くと何時からそこに居たのだろうか、真っ暗闇の中庭にライオネルが立っていた。
「っ陛下!! 無事に戻られたのですね!」
「……ああ、たった今ね。私の留守にこんな事が起きてしまうなんて、本当に申し訳ない」
「そんな! 陛下に非などございません!! 俺、警備隊の一員として何も出来ず、その癖アーサの事も守れなかったんです。本当に情けなくて…」
「ジュリ君……君はとても真っ直ぐだね。いつもアーサに付いてくれていてありがとう。これからも息子を、アーサを頼むよ」
「もちろんです、陛下!!」
ライオネルは虚空を見つめる様な表情でラインアーサを抱き上げ、そのまま寝室のベッドへと移動させた。
「後ほどここへ医師を呼ばせよう」
そう言ってラインアーサの顔を眺めるライオネルの神妙な横顔を、ジュリアンもまた不安な気持ちで眺めていた。
「陛下。俺このままアーサを見てます。陛下は王妃様の所へ…」
「ありがとう。そうさせてもらうよ」
ライオネルは力なく微笑みを浮かべると踵を返しラインアーサの寝室から退室して行った。
───ライオネルが王宮に戻った事により、大広間に集められていた役人達の不安と緊張感は一斉に緩和された。
ライオネルは今起こっている事実を落ち着いた口調で説明をし、皆を安心させたが状況は厳しい。何故なら今現在シュサイラスア大国はもちろん、他の国も似たような状況に置かれていると言う事なのだ。
「……っく…、ジュリ……。俺……悔しい、情けない…」
「……」
そんな事は無いと否定したいのだがジュリアンもまた同じ気持ちだった。
理由はどうであれ、窮地に立たされていた主のすぐ側に居れなかった事。助ける事が出来なかった自分が悔しくて情けなくて、ラインアーサにかける言葉が見つからなかった。
この後どんなに説得しても中庭から頑なに動こうとしないラインアーサの背中を擦り、落ち着くまで宥め続けた。
気付くとラインアーサは糸が切れたの如く意識を失っていた。あまりにも衝撃的な出来事を目の当たりにし、限界に達したのだろう。
先程までこの中庭に吹き荒れていた風もラインアーサの意識と共に凪いだ。
「アーサ? 大丈夫か?! 今医務室に…」
「私が寝室まで運ぶよ」
優しげな低音の声に振り向くと何時からそこに居たのだろうか、真っ暗闇の中庭にライオネルが立っていた。
「っ陛下!! 無事に戻られたのですね!」
「……ああ、たった今ね。私の留守にこんな事が起きてしまうなんて、本当に申し訳ない」
「そんな! 陛下に非などございません!! 俺、警備隊の一員として何も出来ず、その癖アーサの事も守れなかったんです。本当に情けなくて…」
「ジュリ君……君はとても真っ直ぐだね。いつもアーサに付いてくれていてありがとう。これからも息子を、アーサを頼むよ」
「もちろんです、陛下!!」
ライオネルは虚空を見つめる様な表情でラインアーサを抱き上げ、そのまま寝室のベッドへと移動させた。
「後ほどここへ医師を呼ばせよう」
そう言ってラインアーサの顔を眺めるライオネルの神妙な横顔を、ジュリアンもまた不安な気持ちで眺めていた。
「陛下。俺このままアーサを見てます。陛下は王妃様の所へ…」
「ありがとう。そうさせてもらうよ」
ライオネルは力なく微笑みを浮かべると踵を返しラインアーサの寝室から退室して行った。
───ライオネルが王宮に戻った事により、大広間に集められていた役人達の不安と緊張感は一斉に緩和された。
ライオネルは今起こっている事実を落ち着いた口調で説明をし、皆を安心させたが状況は厳しい。何故なら今現在シュサイラスア大国はもちろん、他の国も似たような状況に置かれていると言う事なのだ。