《完結》君と稽古した日々 ~アーサ王子の君影草~【番外編】
 ルゥアンダ帝国の兵士達は王の首を縦に振らせる為、悪行の限りを尽くした。

 手酷いそれに耐えきれず、ついにアザロア国家がルゥアンダ帝国の手に落ちる。
 逆にオゥ鉱脈都市の領主、アルマンディは反論を唱え抗った。
 それがジャコウの反感を買い、都市に火を放たれ壊滅に追いやられた上に領主一家全員の命を狙われたのだ。結果、アルマンディと長男のブラッドフォードが落命したとの訃報が入り皆、言葉を失った。

 ───たった三日の間にこれだけの被害が出た。

 事態は転がり落ちる様に思わしくない方へと向かい続け、六日目。
 煌都パルフェの司祭 ガトーレが決起した。

『ジャコウの行なった行為は謀反であり、内乱罪に値する。よってこの内乱の首謀者であるジャコウとこれに関わる共犯者に無期禁錮の刑罰を下す』

 とリノ・フェンティスタ全土に声明を出した。

 ガトーレの声明に逸早く賛同したのがフリュイ公国の公妃 リリィオスだ。

 フリュイ公国もまた、幼い公女を人質に取られていたが国内の守りは硬く、公妃自らガトーレと共にルゥアンダ帝国の根城に伺候した。

 ライオネルもこの考えに賛同し、一足遅れてルゥアンダ帝国に赴くも帝都は目を背けたくなるほど酷い有様だったという。
 王が暴走し指導者を失った国の成れの果てを目の当たりしライオネルは酷く衝撃を受けたのだ。


 ───結果的にルゥアンダ帝国の皇帝ジャコウは拘束され、ガトーレの声明通りに無期禁錮の刑罰を下された。

 だがそれは〝犠牲〟の上に成り立つものだとガトーレも他の王達も知っていた。
 しかしジュリアンを含め一般の民は〝それ〟を知る由もなく内乱は収束に向かった。

 ジャコウという内乱首謀者は居なくなったが、一度乱れてしまった平和を取り戻すのはそう簡単な事ではない。
 ルゥアンダ帝国の兵士に破壊された街、住む場所を無くした大勢の人々。一度猜疑心が芽生えてしまった者や大切な人を失い絶望した者。
 様々な物資が途絶え、あらゆる物の高騰に食糧難。それに伴う窃盗や野盗達の増加。

 リノ・フェンティスタの民たちの心は荒んでいく一方だった。


 ライオネルは王宮の結界を何重にも重ね、強化すると共に王宮内の大広間を避難民に解放した。その他にも列車(トラン)の路線の修復工事を急速で進めた。
 そうして土地が広く気候の良いノルテ地区の一角を開拓し、他国の難民をも受け入れる体制を整えたのだ。
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