《完結》君と稽古した日々 ~アーサ王子の君影草~【番外編】
「───ジュリ、毎日来てくれてありがとう。でも俺、もう大丈夫だから」
今日も一日の終わりにラインアーサの部屋を訪ねた所、申し訳なさそうにそう告げられた。
内乱が起きてからもう半年が経った。最近ではシュサイラスアに来訪する難民数は徐々に落ち着き、国内情勢も以前に比べればまだまだではあるが、少しづつ回復傾向にある。このまま数年掛ければシュサイラスア大国は完全に復興出来るだろう。
ジュリアンは警備隊の仕事の他にも、依然としてラインアーサの手助けや王宮での雑務等も快く引き受けていた。大変でないと言えば嘘になるが、それでもリーナやラインアーサから目を離したくなかったのだ。
「大丈夫って言われてもなぁ、俺が来たくて来てるわけだし」
「……でも。ジュリだって仕事、忙しいのに。本当ならもう警備隊の寄宿舎に帰らなきゃいけないんだろ?」
「いいんだよ、今はまだ。それにちゃんと許可もらってるから」
「そうなのか?」
「まあ、そろそろお前にもちゃんとした側近的な存在が居てもいいのかもな!」
「側近かぁ。今までずっとジュリが居てくれたからあんまりぴんと来ないけど……」
「だな。でも本当、考えとけよ?」
何がきっかけかは分からないが、ラインアーサは少しづつ前向きになって来ている。表情は未だ硬いものの、少しづつ以前の様に続けて会話出来る様にもなりジュリアンの心も僅かに軽くなった。
「あのさ、ジュリ。明日から俺もジュリについて行っていいか?」
「ついて行ってもって旧市街の支援にか? いや、駄目だろ。そもそもアーサは警備隊じゃあないし、ましてや王子なんだから危険が多い旧市街にはもう連れて行けないって」
「でも、俺だって何かしたいんだ! 安全だからって何もせずに王宮に閉じこもっているのはもう嫌だから」
「……アーサ」
「じゃあ今から父様に許しを貰ってくる! ちょっと待ってて!!」
「え、あ! おいアーサ!」
言うなりラインアーサは部屋を飛び出して行く。すぐに後を追いかけ、結局二人でライオネル部屋の扉を叩く。遅い時間に皇帝陛下の部屋に訪れるのは気が引けたがライオネルは快く部屋に招き入れてくれた。
案の定初めは大反対されたが、思いのほかラインアーサの決意は固かった。こうなると自分の意見をなかなか曲げない頑固な所があるラインアーサ。
最初に折れたのはジュリアンだった。