《完結》君と稽古した日々 ~アーサ王子の君影草~【番外編】
「ったく……分かったよ、アーサ。あくまでも俺の手伝いって事だよな?」

「うん! 俺、ジュリの手伝いをしてもっと色んな事を知りたいんだ。俺に出来る事なら何だってやりたい!」

 仕方なくラインアーサに助け舟を出すと更に決意を固めた様に強く言葉を放つ。

「ああ、全く……アーサには参ったよ。言い出したら聞かない所はアナそっくりだ。しかしこうも頑なとはね……ジュリ君、どうかうちの頑固息子を頼むよ」

 結果的にライオネルも折れたのだった。

 ジュリアンは心配そうにラインアーサを見つめるライオネルの前に跪いた。

「必ずやお守りします」

 国王陛下と大切な主に心からの忠誠を誓う。



 ───翌日から二人は行動を共にした。

 早起きはなかなか克服出来ないながらもラインアーサは特例で訓練所へと足を運びジュリアンと共に早朝から鍛錬を重ねた。
 朝の号令の後は班別となり割り振られている地区へと支援に向かう。

 ジュリアンは旧市街、夕凪の都担当だ。この地区は古い家屋や建築物が多く、内乱の被害で破壊された物がまだまだ目立つ。

「よし、今日もやるぞ!」

 警備隊は夕凪の都に到着するなり手際よく準備を始める。炊き出しはもちろん瓦礫の撤去、家屋の修繕。怪我人がいればその手当などあらゆる手助け等、一日中こなして回った。
 ラインアーサは癒しの煌像術(ルキュアス)が得意な事もあり、主に救護班の手伝いを担当。

 ジュリアンが突然訓練所に王子を連れて来た事により、初めは戸惑いの声が上がった。それでもラインアーサの人好きのする容姿と人柄の良さで警備隊の隊員とはすぐに打ち解けていった。


「ありがとうございます! 殿下!! 殿下のおかげで救護の幅が広がりました!」

「……そんな、俺は出来る事をしただけで、救護班の皆が色々教えてくれて逆に助かってるよ」

「いえ! 殿下の治療術は完璧です! 一人でも多くの民を助ける事が出来て救護班としてこんなにも嬉しい事はないですよ!!」

 特に救護班の班長であるアマランタとは休憩時間に良く話し相手になってもらっている様だ。

「お、大袈裟だよ…! それに殿下じゃあなくて名前で呼んでくれると嬉しいな」

「そんな! 殿下をお名前で!? 宜しいのですか?」

「もっちろん! 俺なんてアーサって呼んでるぜ、な! アーサ!」

 ラインアーサの背後から肩を組むようにして話に参加するジュリアン。
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