《完結》君と稽古した日々 ~アーサ王子の君影草~【番外編】
「ジュリアン、お前っ! 殿下の事をそんな風に!! なんて畏れ多い……」
「いいじゃん! 俺とアーサは幼なじみなんだからさ。アマランタは真面目なんだよな」
「それでもだ! ジュリアンが軽すぎるんだろう?」
「えーー? 俺だって真面目なんですけど?」
「だいたい私の方が歳上だと言うのに、ジュリアンは少し態度が大きいんじゃあないか?」
「歳上って言ってもたった三つじゃん!」
「それでも歳上なのだからもう少しは後輩らしく……殿下、どうかなされましたか?」」
アマランタと言い合っていると少し物憂げな表情のラインアーサに気付く。最近は多少笑うようになってきてはいるが、ふとした瞬間こう言った顔を見せる。
「ん、ああ。いや、二人共楽しそうだなぁと思って! また訓練所に顔出すから俺にも体術とか色々教えて欲しいな」
「もちろんだぜ、なあアマランタ!」
「ええ!」
即答するとラインアーサはほんの僅かだが微笑んだ。
短い休憩時間の後、持ち場に戻る。ジュリアンもとい警備隊の皆が誠心誠意を尽くした。
そうして仕事を一通り終え、撤退作業をしている時だった。ふいにラインアーサが細い路地の奥を見据えた。
「ねえジュリ…!」
「うん? どうした、アーサ」
「あそこ、誰か倒れてる…!」
「えっ!? 本当か? っておい待てよアーサ!!」
確認を取る前に駆け出すラインアーサ。止める間もなく路地の奥へと入っていく。何度か見回りを行ったがそこには誰も居なかった筈だ。
「っ…血だ!」
しかしそこには確かに血を流して横たわっている怪我人が居た。
「待てってアーサ! 一人で行動するなよ、危ないだろ?」
「ごめん、でも……早く助けないと!」
「ったく、分かってるよ」
ラインアーサは症状を確認する為、怪我人の傍らに膝を折って屈み込んだ。
地面の石畳には大量の血液が染み広がっている。
「っ…この人かなり重症かも」
「……ん…」
「良かった、意識はあるみたいだ! ジュリ…!」
「ああ、今救護班を呼びに…」
「っ…うるさいな」
「!!」「!?」
唐突に声が上がった。
その大して大きくもない声に、ジュリアンもラインアーサも一瞬身を震わせる。
声の主は力無く地面に手を着くと上半身を起こす。
頭部を怪我しているのか顔の半分以上が血液で紅黒く汚れ、長い前髪の隙間から漆黒色の瞳を覗かせた。
「いいじゃん! 俺とアーサは幼なじみなんだからさ。アマランタは真面目なんだよな」
「それでもだ! ジュリアンが軽すぎるんだろう?」
「えーー? 俺だって真面目なんですけど?」
「だいたい私の方が歳上だと言うのに、ジュリアンは少し態度が大きいんじゃあないか?」
「歳上って言ってもたった三つじゃん!」
「それでも歳上なのだからもう少しは後輩らしく……殿下、どうかなされましたか?」」
アマランタと言い合っていると少し物憂げな表情のラインアーサに気付く。最近は多少笑うようになってきてはいるが、ふとした瞬間こう言った顔を見せる。
「ん、ああ。いや、二人共楽しそうだなぁと思って! また訓練所に顔出すから俺にも体術とか色々教えて欲しいな」
「もちろんだぜ、なあアマランタ!」
「ええ!」
即答するとラインアーサはほんの僅かだが微笑んだ。
短い休憩時間の後、持ち場に戻る。ジュリアンもとい警備隊の皆が誠心誠意を尽くした。
そうして仕事を一通り終え、撤退作業をしている時だった。ふいにラインアーサが細い路地の奥を見据えた。
「ねえジュリ…!」
「うん? どうした、アーサ」
「あそこ、誰か倒れてる…!」
「えっ!? 本当か? っておい待てよアーサ!!」
確認を取る前に駆け出すラインアーサ。止める間もなく路地の奥へと入っていく。何度か見回りを行ったがそこには誰も居なかった筈だ。
「っ…血だ!」
しかしそこには確かに血を流して横たわっている怪我人が居た。
「待てってアーサ! 一人で行動するなよ、危ないだろ?」
「ごめん、でも……早く助けないと!」
「ったく、分かってるよ」
ラインアーサは症状を確認する為、怪我人の傍らに膝を折って屈み込んだ。
地面の石畳には大量の血液が染み広がっている。
「っ…この人かなり重症かも」
「……ん…」
「良かった、意識はあるみたいだ! ジュリ…!」
「ああ、今救護班を呼びに…」
「っ…うるさいな」
「!!」「!?」
唐突に声が上がった。
その大して大きくもない声に、ジュリアンもラインアーサも一瞬身を震わせる。
声の主は力無く地面に手を着くと上半身を起こす。
頭部を怪我しているのか顔の半分以上が血液で紅黒く汚れ、長い前髪の隙間から漆黒色の瞳を覗かせた。