釣り合わない!!~溺愛コンプレックス~
移動して来て丁度、1ヵ月。
暦通りの休みがあった企画部の時代と比べて、シフト制の勤務の店舗では、曜日の感覚がたまにおかしくなる時がある。
明日は金曜日。だけど4日ぶりの休み。
不定休はなかなか気分的にリズムが掴めない。
事務所の電気を消して、裏口から出ると、明かりの消えた店舗の正面入り口のほうに人影が見えて、近付いたみた。
「従業員は皆、帰っちゃいましたけど、誰かお待ちでしたか?」
背の高い後ろ姿に声をかけると、私の声に反応したスーツ姿の男性が振り返る。
「良かった。まだ帰ってなかったんだ?」
安心したように笑顔を浮かべて振り返った男性は照れ臭そうな表情をしていた。
「響・・・君?」
いつもの作業着姿と違い、スーツ姿の彼は思わず見惚れてしまうほど、いつもの何倍も格好良い。
いつも以上に格好良い姿で、居るはずのない彼が目の前にいるんだから
思わず、息を飲んで
自分の頬をギュッとつねった。
「痛たたたっ」
思わず声に出してしまうと「何やってんの?」と、笑いながら私の頬を撫でる。
「どうして響君が・・・ここにいるの?」
どうしても、夢のような気がして、私の頬を撫でる優しい笑顔を見上げた。