釣り合わない!!~溺愛コンプレックス~
「・・・そっか。
それなら、明日からはちゃんと休憩室にある喫煙スペースで吸ってね。
それなら誰かに見られても問題ないから。」
にこにこ笑う響君の笑顔が視界の隅にちらちら映る。
「大丈夫・・・私。
明日からもうここに来ないから。」
そう言って、ようやく笑って見せた私を、響君はなんとも言えない表情で見つめた。
「・・・どういうことだよ?」
初めて見た真剣な表情。
その表情を見た途端、なぜだか気が緩んだように勝手に涙が溢れてきた。
「突然、移動が決まったの・・・
最後までやり遂げたかった仕事もあったし・・・っ
これからたくさん挑戦したいこともあったのにっ・・・」
溢れては零れ落ちる涙と一緒に
言葉にしたかった言葉が、ようやく呪縛から解放されたように出てくる。
初めて人前で泣いた。
響君から見たら、おばさんであろう私に泣かれて、ほとほと困っているかもしれない。
それでも、私の背中を優しく撫でてくれる大きな手の平は、温かった。
だから余計に涙が零れた。