社長は今日も私にだけ意地悪。
「ん……」
目を覚ますと、見慣れない天井が見えた。
ここ、どこだろう。
そうだ、確か私、楽屋で倒れたんだ……。
それから意識のない間にここへ連れてこられたらしい私は、どうやらこのふかふかのベッドでずっと眠っていたらしい。
「気が付いたか」
その声に反応して、バッと上半身を起こす。
聞き間違えるはずがない。その声の主は……
「社長……⁉︎」
ラフな部屋着に身を包んだ、大好きな人。
「ど、どうして社長がここに⁉︎ というかここはいったい⁉︎」
途端にわたわたと動揺し始める私を見ながら、彼もベッドの上に腰をおろしてくる。
距離が近い。
彼の髪は、きちんと整えられている仕事中とは違い、今は無造作にふわりと揺れており、部屋着なのも相まっていつもより少しだけ雰囲気か違って見える。
ときめいている場合ではないのはわかっているけれど、それでも反応してしまう自分の心臓を恨めしく思う。
「芽衣が楽屋で倒れたと、井ノ森くんから会社に電話があったから迎えに行ったんだ」
「で、でも、その電話は社長が対応した訳じゃないですよね?」
「佐藤くんに頼んでおいたんだ。彼、今日は仕事をしながら営業部室のテレビでミュージックインホームをチェックすると言っていたから、万が一芽衣から電話があったら俺に繋いでほしいと」
「え、え? 佐藤さんとそんな話をしたんですか? どうして? というか、私から電話ってどういうことですか?」
色々がわからないことが多くて頭の中は疑問符だらけ。
すると社長が突然、私の額にデコピンをしてきた。
「痛っ」
「芽衣が具合悪いから心配してたってことだよ!」
少しイライラしたような、だけど優しいその口調と言葉に、
「……ありがとうございます」
と素直に返した。