社長は今日も私にだけ意地悪。
「こうして三人集まってると、何だか同窓会みたいだね!」


そう言って無邪気に笑う広香は今でもやっぱり可愛い。

こんなクソみたいな同窓会、あってたまるかって感じもするけれど。



「あ。そう言えばこの間、中野さんから外国の紅茶もらったんだった! ちょっと取ってくる!」

そう言って広香はバタバタとリビングから出ていく。
中野って誰だ、と思ったけれど、同じアパートに住んでいた海外留学中の女性のことかとすぐに察した。


って。ちょっと待て広香。



俺と響 涼太を二人きりにするんじゃねえよ。



「最近どう?」

突然、響 涼太の方から口を開き、そんな質問をしてくる。

当たり障りのないありふれた話題だが、無言で広香を待ち続けるよりはマシか、と思う。

何より無口なこいつが、俺に気を遣って自ら話題を振ってくれたことに、正直なところ多少は嬉しく思った。

恋敵といっても、所詮は過去の話だしな。こんなもんか。


「最近っていうのは仕事のことか? そりゃあ順調だぜ。まだまだ忙しいとはいかないけどな。でも正式にデビューしたらきっと多少は忙しく……」

「あ。俺、君の仕事には一切興味ないから。また広香に手を出されたら困るから、彼女が出来たのか一応聞いておこうと思っただけ」


……最近どうって、そっちかよ。


ていうかやっぱり相変わらずムカつく野郎だな‼︎ 広香はこんな野郎のどこを好きになったんだ⁉︎



「心配しなくても、今は恋愛禁止だから安心しろ、この無表情野郎!」


半分キレながらそう答えると、響 涼太は珍しく眉根を寄せ、不思議そうな顔をして「恋愛禁止?」と聞き返してきた。
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