社長は今日も私にだけ意地悪。

打ち合わせ室から廊下に出ると、何とまたしても社長に出くわす。
また私のことを待っていたのだろうか? と思ったけれど、この間みたいに部屋の外で待っていた訳ではなくあちらから歩いてきたし、私と鉢合わせた時に社長も一瞬でも驚いた顔をしたから、今回は偶然だろう。


「お疲れ。打ち合わせか?」と声を掛けてくれるも、初めて会った時ーーつまり皆が知る、優しくて穏やかな方の口調ではないのは、辺りには私達以外見当たらないからだろう。


「はい。前にステージでライブがしたいと言っていたので私なりに考えたことを提案したりしていました」

辺りに誰もいないということは、またこの間みたいに壁際に追いやられて耳元で囁かれたりするかもーーと思いかなり身構えながら話す。
しかし今日はそんなことはなく、ごく普通に「考えたことって? ステージが用意出来たのか?」と聞いてきた。


「ええと……」

「ん?」

数時間前は、名案が思い付いたと自信満々にメンバー達に連絡をし、オフィスへ呼び出した。
しかし『馬鹿にしてるのか』と怒鳴られ、自分の提案が名案でも何でもなかったとようやく気付いた。
結果的に彼等はステージに立ってくれることになったけれど、私が提案したのはこのステージです、と社長に話すことに恥ずかしさを感じる。
意地悪く馬鹿にしてくるならまだいい。こいつはこんなに仕事が出来ない奴なのかとガッカリされるのが怖い。


でも、相手は社長。「手に持ってるの資料? 早く見せろって」と言われたら、拒むことなんて出来ない。

私は先程木崎さん達にも見せたお花見祭りのチラシを社長に差し出した。
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