社長は今日も私にだけ意地悪。
彼は私から受け取ったチラシをまじまじと見ていく。
ああ、何て言われるのかな。不安で緊張する……。

社長がチラシから顔を上げた瞬間、ドキッと、心臓に走る緊張が一層増す。


すると社長はーー


「いいんじゃないか?」


と言ってくれる。今この場には二人きりなのに、意地悪さはない、穏やかで優しい笑顔で。


「本当ですか?」

「ああ。あの子達はまず、色んな場所で色んな人達に歌を届けて場数を踏ませた方がいい」

良かった。私の考えと提案、間違ってはいなかったのかな、とひとまず安心する。


「まあ、客層の多くが近所の小学生とかだろうから、あわよくばファンを増やそうとかはそこまで期待せずに、あくまで場数を踏ませることを考えろ」

「はい!」

「お。いい返事」

その言葉と共に社長の右手がすっと伸びてきてーーぽん、と私の頭に置かれる。

突然のことに、さっきとは違う緊張感に包まれる。
社長の手は大きくて、温かい。
今は二人きりで、本当は意地悪なくせに、優しさで包んでくるようなことをしてくるから、思わずドキドキしてしまう……。
駄目、雰囲気に流されたら! 社長は意地悪! 社長は口悪い! ときめく要素はない!
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