社長は今日も私にだけ意地悪。
「で、では失礼しますね」

ぺこりと頭を下げ、社長に背を向けて歩き出す。
これ以上彼と話して、変に流されそうになるのが怖かった。


だけど、数歩進んだところで突然、



「芽衣」



と後ろから名前を呼ばれる。


足を止めて振り返る。私の名前を呼んだのは勿論社長で。


「め、芽衣?」

「何だよ。お前の名前は柳葉 芽衣だろうが」

それはそうだけど。フルネームを知っているなら普通に名字で呼べばいいじゃないか。下の名前を呼び捨てなんて……。


戸惑う私に、彼は更に驚きの一言を放つ。


「明日の夜、空いてるか? 空いてたら一緒に飯行くぞ」


……飯?


「私と社長がですか?」

「他に誰がいる」

「いや、だって……」

何で? そんなことってある? 新入社員の私にとって社長という立場は、少し大袈裟な言い方をすれば雲の上の存在とも言える。そんな人と、一緒にご飯?


「店は予約しておく。時間とか詳細は後でパソコンにメールしておく」

「あ、あのっ⁉︎」

強引に話が進められていく。私の制止に振り向くことなく社長は私とは反対方向に去っていく。


ど、どうしよう⁉︎
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