社長は今日も私にだけ意地悪。
「しかし本当に申し訳ありません、僕までご一緒させていただきまして!」
普段の私なら足を踏み入れることすらない高級レストラン内に、佐藤さんの声が広がる。
社長からのお誘いを断ることは出来なかったけれど、二人きりで食事に行く勇気もなく、私は佐藤さんを誘った。
佐藤さんには『何でお前が社長に食事に誘われるんだよ⁉︎』と驚かれたけれど、それは私にもさっぱり分からないので説明は出来なかった。
しかし、社長に憧れている佐藤さんは迷うことなく一緒に食事に行くことを了承してくれた。
その後、社長から送られてきたメールで食事をする場所と時間を確認してから、佐藤さんも一緒に行くことを返信に書き添えーーそして当日。今に至る。
社長が予約してくれていたのは、オフィス街にあるビルの中にあるイタリアンレストラン。
社長からのメールには【カジュアルレストラン】と書かれていたけれど、私にとってはカジュアルでもなんでもない。
ビルの十二階のレストランなんて友達同士では来ないし、運ばれてくる料理の数々も普段は口にしないお洒落なものばかり。
でも、ドレスコードが必要とまではいかないし、スタッフがかしこまりすぎていない感じは少し安心する。
「とんでもない。人数は多い方が食事は楽しいからね」
佐藤さんにそう答える社長は、にこやかで穏やかな王子様モード。
窓際の丸テーブルに、私と佐藤さんが隣同士に座り、社長が私達の正面に座っている。
佐藤さんは社長と話が出来てとっても嬉しそうだし楽しそう。
佐藤さん騙されてる。本当の社長は、あなたが憧れるような人じゃないと思う。