社長は今日も私にだけ意地悪。
「それは思いませんでした。確かに高校時代は演奏することにも興味が出あって器楽部でギターを弾いていたんですが、自分がプロになりたいは全く思わず。
大学生になって上京してきたら、街でストリートライブをたくさん見れるようになって嬉しかったんです。暇があれば、追い掛けるように見に行っていたバンドグループもありました。
私は、自分が音楽を演奏するよりも、音楽を演奏する誰かを見ていたい。そして、出来ることならファンよりも近い距離で、その人達がより輝く為のお手伝いをしたい、そう思ったんです」

……なんて、つい熱く語ってしまった。恥ずかしいな。

佐藤さんは「ふうん」と答えるのみだったけれど、社長は


「歌手が好き、か……」


と呟く様に言う。


「社長……?」

何だろう。私、変なこと言ったかな?

首を傾げる私に社長は、


「いや。君はそうだよねと思って」

「?」

何だろう。ますます意味が分からない。


「それより社長! 折角の機械ですから、もし宜しければ社長の敏腕さの秘訣等を是非ご教授いただけませんか!」

佐藤さんが、話題を完全に変えて社長にそう言う。
社長と彼は「はは。おだてても何も出ないよ」、「おだててなんかいません!」などと会話を交わしながら、仕事の話をし始める。


……さっきの社長の言葉、少し気になるけどまあいいか。
赤ワインを少しずつ口にしながら、私も二人の会話を聞き、色々と勉強になった。
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