社長は今日も私にだけ意地悪。
「流れ星ですか? そう言えば一度も見たことないです」

私も社長につられるようにして空を見上げる。
東京の空は、私が生まれ育った田舎よりも星が見えにくい。明るい高層ビルが多いからだろうな。
だけど、田舎でも流れ星は見たことがない。


「そうか。俺も子供の頃に祖父が持っている地方の別荘で一度見たきりだ。
流れ星は英語でshooting starだが、感動的な星という意味合いで、造語だがスターエモーションという名前が生まれた」

「流れ星が社名の理由になっているということですか?」

そうだ、と社長は答える。
知らなかった。会社のホームページにも書いていないし、就活中の会社説明会でも言われなかった。


顔を上げた状態のまま、社長は続ける。

「流れ星は、誰もが一度は見てみたいと思うものだろう。
一度見ても飽き足らず、もう一度見たい、更にもう一度……と追い掛けたくなる。
そんな流れ星のようなアーティストをたくさん生み出していきたい。そんな理由からこの社名になった」


一度は必ず見たい、その後も何度も見たくなる流れ星のようなアーティスト……。その言葉が私の心にやけに響く。


だからだろうか。


「私も……」

「ん?」


「私も、生み出していきたいです! 流れ星のようなそんなアーティストを‼︎」

力強く、そう言ってしまった。
またしても恥ずかしい思いをする。私、昔から思ったことや感じたことが思わず口に出てしまう傾向があるんだよなあ……本当に気を付けないといけない……。


今度こそからかわれるかなと身構えている私に社長は。


「そうだな」

「社長?」


社長は私に顔を向け、そしてーー子供みたいに無邪気そうな、とびきりの笑顔で。


「一緒に生み出し、育てていこう。最高で一流のアーティスト達を」
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