ワンだふる・ワールド ~飼育系女子の憂鬱な1週間
「まぁ、いい。
亀井はちょっと遅れるらしいから、
先に一杯やってくれ。
さあ、そこのお嬢さんも
かしこまってないで飲んでくれ」
そういうと、土佐犬は手を二回叩いた。
即座に襖が開き、女中に熱燗を二本頼んでいる。
どうやら、こちらに酒の好みを選ぶ権利はなさそうだ。
――まぁ、お酒なら何でも来いだから平気だけどね!
と思った瞬間、ハッとする。
シェパードが土佐犬と私が合うって言った理由。
実直だなんてまっぴら嘘で、本当は酒がめっぽう強いって経理部で聞いたんじゃないの?
しかも、癖があるどころじゃなくて、バリバリの闘犬じゃない。
どう見ても、私なんかが太刀打ちできる相手じゃないし…。
だとしたら、このシェパードも食えない男だ。
何か他に企みがあるのかもしれないと警戒心すら湧いてくる。
程なくして、女中が熱燗を持ってきた。
土佐犬が私を手招きする。
「村上と申します。 宜しくお願い致します。」
彼の脇に正座し、挨拶しながらお酌を受ける。
一気に飲み干すと、土佐犬の眉が下がった。
「ほぉ~、いい飲みっぷりだ。
村上君とは気が合いそうだな。」
「ありがとうございます」
注がれるままに3杯飲み干して、土佐犬に返杯している時だった。
襖の向こうから声がした。