エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
「はい。祖母の代から受け継いだ訪問着です。せっかくのこのような場ですので、弊社のよさをアピールしたいと意気込んでまいりましたが、場違いだったのかもしれません」


だって、他に着物の人はひとりもいない。


「そんなことはないでしょう。注目の的ですよ。着物を着てくるという発想が他の人になかっただけです」


一ノ瀬さんにそう言ってもらえて、ちょっとホッとした。


「あのっ、先日はいきなりサンプルを押し付けてしまい——」
「そんなことより、大丈夫ですか?」
「えっ?」
「顔が真っ青だ」


彼に指摘され、体調が悪化していることを意識してしまう。

苦手なアルコールを飲んだことときつく帯を締めていること、そして極度の緊張のせいで、本当は吐きそうだ。

でも、せっかく一ノ瀬さんと話せるチャンスなのに、そんなことは言っていられない。


「大丈夫です」
「まったく、あなたは」


強がってみせると、一ノ瀬さんは顔をしかめ、呆れ声。
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