エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
「待ってください」


再び車に乗り込もうとする彼のジャケットの裾をつかんでしまった。
すると彼は、振り向いてくれる。


「どうした?」
「あ、ああああのっ……」


自分で引きとめておいて声が上ずる。


「私、ついさっきまで、本当はすごくへこんでいたんです。でも、一ノ瀬さんに会えて、元気が出ました。代償なんてたいしたことはできませんが、しょ……食事を作りに行ってもいいですか?」


つい、口をついて出てしまった。
とびきり優しい彼の前で、私も優しくなりたいと思ったのだ。


「これから会議だと言っただろ?」


彼は眉をひそめ、顔をゆがめる。


「あっ、すみません」


余計なことを言ってしまったと顔を伏せると、彼が私の手を不意に握る。


「そんなうれしいことを言われたら、会議に身が入らなくなるだろ?」
「え……」


そういう意味で困っていたの? 
でも、本当にうれしいと思ってくれるの?
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