【完】学校イチ人気者の彼は、私だけを独占したい。
「別にお礼ぐらい、いいじゃないですか。ねえ?」
私がそう言うと、ホッとしたように胸を撫で下ろす女の人。
この人の正体が知りたい。
だから。
「名前、なんて言うんですか?」
もう、ただのやけくそだよ。
先輩が教えてくれないなら
自分から聞けばいいだけのこと。
ふざけんな、と言いたそうな目で私を見てくる先輩は。
さっきから私の方ばかりに目を向けて、女の人を視界にいれないようにしている。
「ゆあ……安藤優愛って言います」
「私は天沢詩って言います!気軽に詩って呼んでください」
優愛さんは屈んだままなのに。
座って握手するなんて、失礼だと思って、立ち上がろうとしただけなのに。
グイッとミア先輩に引っ張られ、膝かっくんされたみたいに体のバランスを崩してしまい。
座っている先輩に後ろから受け止められる。
優愛さんが見ている前で、ギュッと後ろから抱き締めてくる先輩の手は。
いつもより強引さが増している。