【完】学校イチ人気者の彼は、私だけを独占したい。
「悪いね。いま、取り込み中」
先輩に抱き締められたままだから、何が起きてるのか全然分からない。
でも、先輩のその言葉に反応して
誰かが逃げていく足音だけはハッキリと聞こえてくる。
ドキドキした。
緊張で死ぬんじゃないかって。
だけど
私からゆっくりと体を離した先輩の熱は、離れたあとも残ったままだ。
「天沢ちゃんの顔、見られなかったし。
ここ薄暗いから、多分バレはしなかったと思う」
「……」
「ごめんね、髪。ほどいちゃって」
渡された髪ゴムを受けとる。
先輩が私の髪をほどいたのは
きっと抱き締めてる相手が、私じゃないと思わせるためにしたことなんだろうけど……。
急に抱き締められて、こっちは死んでしまいそうなほどドキドキしたんだよ。
先輩の体温は、やっぱり私をおかしくさせる。