【完】学校イチ人気者の彼は、私だけを独占したい。
あくまで白を切る先輩に、悲しいんだかムカつくんだか。
いろんな感情が込み上げてくる。
だけど。
「てか、気安く話しかけないでくれる?」
グイッと目の前に現れた、先輩との距離は0キョリ。
先輩が屈んで、私に吐いた言葉は、冷たいどころじゃ済まされない。
「天沢に飽きたの、俺」
「なっ」
「だから気安く話しかけてほしくないんだけど。
それに勝手に教室来られても困るし」
「……」
「なにしに来たかは知らないけど。
天沢の用件とか正直どうでもいい」
「……」
「じゃあね~」
ひらひらと私の目の前で手を振るミア先輩は。
ーーバンッと教室の引き戸を閉め、姿を消した。
「……あは。やっぱあんたなんか、美秋に遊ばれてただけよ。
ただの後輩が自惚れてんじゃないわよ」
すべての光景を見ていた嫌味な女の先輩は。
悪役顔負けの台詞を吐いて、私の惨めな姿を見れたことに満足したのか。
スキップしながら自分の教室に戻っていた。
鐘が鳴る。
授業が始まる合図が、脳に響く。
皆が慌てて教室に入っていく中で。
まるで自分だけがこの場に取り残されたみたいに、さっきまでうるさかった廊下が急に静かになった。